小論文を書くとき、最初の一文がなかなか出てこないという経験はありませんか。
書き出しは答案全体の印象を左右する重要なパートです。しかし、書き出しにはいくつかの「型」があり、それを知っていれば迷うことなく書き始められます。
この記事では、すぐに使える5つの書き出しテンプレートを具体例とともに紹介します。
書き出しが重要な理由
採点者は多数の答案を読みます。その中で、書き出しの一文は「この受験生の論理力や文章力はどの程度か」を判断する最初の手がかりになります。
書き出しが果たす役割をまとめると、以下の通りです。
| 役割 | 内容 |
|---|---|
| 方向性の提示 | 「何について論じるのか」を読み手に伝える |
| 主張の予告 | 「どの立場から論じるのか」を明確にする |
| 第一印象の形成 | 採点者に「論理的に書ける受験生だ」という印象を与える |
| 自分のペースづくり | 書き出しが決まれば、その後の文章も流れやすくなる |
逆に、書き出しで躓くと制限時間をロスするだけでなく、焦りから文章全体のクオリティが下がってしまいます。テンプレートを覚えておくことは、時間管理の観点からも有効です。
テンプレート5パターン
パターン1: 問題提起型
最もオーソドックスで使いやすい型です。
テーマに関する社会的な問題や課題を提示し、自分の主張へとつなげます。
テンプレート
現在、日本では〜が問題となっている。この問題に対して、私は〜と考える。以下にその理由を述べる。
具体例(テーマ: 地方創生)
現在、日本では都市部への人口集中が加速し、地方の過疎化が深刻な問題となっている。この問題に対して、私はリモートワークの普及を軸とした「関係人口」の拡大こそが有効な打開策であると考える。以下にその理由を述べる。
向いているテーマ: 社会問題系(少子化、環境、教育格差など)
パターン2: 定義確認型
テーマのキーワードの定義を明確にすることで、議論の土台を固める書き出しです。
抽象的なテーマや、解釈が分かれるテーマで効果を発揮します。
テンプレート
〜とは何か。この問いに答えるためには、まず〜を明確に定義する必要がある。
具体例(テーマ: 「豊かさ」とは何か)
「豊かさ」とは何か。経済的な裕福さを指すのか、精神的な充足感を意味するのか。この問いに答えるためには、まず「豊かさ」の概念を多面的に定義する必要がある。
向いているテーマ: 抽象概念系(自由、平等、幸福、教育の意義など)
パターン3: 対比型
対立する2つの立場を示し、自分がどちらの立場を取るかを宣言する書き出しです。
議論の構造を最初から明示できるため、読み手にとって非常に分かりやすい型です。
テンプレート
〜という意見がある一方で、〜という見方もある。本稿では〜の立場から、その根拠を論じる。
具体例(テーマ: 英語教育の早期化)
英語教育の早期化は国際競争力を高めるという意見がある一方で、母語の習得が不十分なまま外国語教育を始めるべきではないという見方もある。本稿では後者の立場から、早期英語教育の課題について論じる。
向いているテーマ: 賛否が分かれるテーマ(死刑制度、SNS規制、外国人労働者受け入れなど)
パターン4: データ提示型
具体的なデータや統計を引用して始める書き出しです。
客観的な事実から出発するため、説得力のある導入になります。
テンプレート
〇〇によると、〜という統計結果がある。このデータが示唆するのは〜ということである。
具体例(テーマ: 若者の投票率)
総務省の調査によると、20代の投票率は30%台にとどまっており、全世代の中で最も低い水準にある。このデータが示唆するのは、若者が政治参加に関心を持てていないという構造的な問題の存在である。
向いているテーマ: データや統計が引用しやすいテーマ
注意:データ提示型を使う場合、不正確な数値を書くと逆効果です。正確なデータが思い出せない場合は、「近年の調査では〜という傾向が報告されている」のように、おおまかな傾向として述べる書き方にしましょう。
パターン5: 体験・問いかけ導入型
自分自身の体験や、読み手への問いかけから始める書き出しです。
ただし、小論文は作文ではないため、体験はあくまで導入に留め、すぐに客観的な議論へ移行することが重要です。
テンプレート
〜という経験/問いをきっかけに、私は〜について考えるようになった。この問題について、私は〜と考える。
具体例(テーマ: 食品ロス)
コンビニでまだ食べられる弁当が大量に廃棄される場面を目にしたことがある。この経験をきっかけに、私は食品ロスの問題について関心を持つようになった。この問題に対して、私はサプライチェーン全体での需給調整が必要であると考える。
向いているテーマ: 日常生活に関わるテーマ、志望理由と関連するテーマ
書き出しでやってはいけないこと
テンプレートを覚えるだけでなく、避けるべきパターンも知っておきましょう。
悪い例1:「私は〇〇について書きます。」→ これは主張ではなく、ただの宣言です。何を論じるかだけでなく、どの立場から論じるかまで示す必要があります。
悪い例2:「〇〇という問題はとても難しいです。」→ 感想文的な書き出しで、論理的な議論の導入になっていません。「何が・なぜ難しいのか」を具体的に述べましょう。
悪い例3:「辞書によると〇〇とは…」→ 定義確認型と似ているようで、辞書の丸写しは思考の浅さを感じさせます。自分の言葉で定義し、議論につなげましょう。
良い例:「〇〇は現代社会における重要な課題であり、私は△△の立場から、□□が必要であると考える。以下にその理由を述べる。」→ テーマの位置づけ、自分の立場、主張、論述の予告がすべて含まれています。
テーマ別・おすすめパターン早見表
テーマによって相性の良い書き出しパターンがあります。
以下の早見表を参考にしてみてください。
| テーマの種類 | おすすめパターン | 理由 |
|---|---|---|
| 社会問題(少子化・環境など) | 問題提起型 / データ提示型 | 具体的な問題意識から入りやすい |
| 抽象テーマ(幸福・自由など) | 定義確認型 | 概念の明確化が議論の前提になる |
| 賛否が分かれるテーマ | 対比型 | 両論を示すことで立場が明確になる |
| 日常・体験関連のテーマ | 体験導入型 | 実感を起点に議論を展開できる |
| 資料読解型 | データ提示型 | 資料の内容を導入に使える |
ポイント:5つすべてを暗記する必要はありません。まずは「問題提起型」と「対比型」の2つを確実に使えるようにしましょう。この2つだけで、ほとんどのテーマに対応できます。
書き出しの練習法
書き出しの型を身につけるには、繰り返し書いて慣れることが大切です。
-
過去問のテーマだけを見て、5パターンの書き出しをすべて書いてみる
同じテーマでも書き出し方によって議論の方向が変わることが体感できます。 -
制限時間を設ける
1パターンあたり3分以内で書く練習をすると、本番での瞬発力が上がります。 -
書き出しだけを集中的に添削してもらう
本文を書かなくても、書き出しの添削だけで論理構成力は大きく向上します。
碧推薦学院では、2,000名超の受験相談実績をもとに、一人ひとりの課題に合わせた小論文指導を行っています。書き出しの型から本論の展開まで、実践的なフィードバックを受けたい方はぜひご相談ください。
まとめ
- 書き出しは答案全体の印象を決める重要なパート。テンプレートを覚えておけば迷わず書き始められる
- 5パターン: 問題提起型、定義確認型、対比型、データ提示型、体験導入型
- まずは「問題提起型」と「対比型」を確実に使えるようにするのがおすすめ
- 書き出しでは必ず「自分の主張(立場)」を明示する。宣言だけ・感想だけにしない
- テーマに合った書き出しパターンを選ぶことで、論理展開がスムーズになる
- 過去問で書き出しだけを繰り返し書く練習が効果的
参考
この記事は「小論文対策 完全ガイド」の関連記事です。